高校卒業から1か月と約1週間が経った現在。私は今日も、瞬と毎年こようと約束したこの場所にいる。


“バイバーイ”

“じゃあな”


瞬と交わした言葉は、卒業式の日に交わしたその言葉が最後だ。

就職先での仕事が始まる少し前、私は瞬に電話を掛けた。コールのあと、彼の声が聞こえることはなかった。それを今日まで、幾度となく繰り返した。

瞬と連絡が取れないことに不安を抱く私の心とは裏腹に、晴れ渡る春の空の下。なんとなく憂鬱な気分を誘うコールを右耳に聞く。

期待と、言葉にし難い複雑な感情を抱いてコールを聞き続け、コールが止んだと思えば、聞き慣れた感情のないアナウンスが聞こえてきた。最後まで聞くこともせずに電話を切る。留守電なら今までに何件か入れてある。

ふわりと吹いた風に誘われるようにして空を見上げれば、水色の空に淡いピンク色の小さな花びらが浮かんでいた。なにかを想えばこれらが届けてくれるかな、なんてドラマチックなことを考え、心の中で想う。


――瞬。いい加減心配になるから、メールだけでも返してくれると嬉しいな。

私はここで、ずっと待ってるよ。

瞬が来てくれる、そのときまで。