それから日が暮れるまで瞬を付き合わせて迎えた、ほとんどの人がただの平日かバレンタインデーとして過ごす奏の誕生日。昨日の別れ際瞬に言われるまで考えてもいなかったけど、奏は今日、暇らしい。昨日家に帰ってから瞬が奏に連絡してくれた。そしてここへ来る前、瞬が再び奏に連絡してくれて、間もなく本日の主役が1人で来る。私は時計を確認し、瞬に2本のクラッカーと青のパーティ帽子を渡した。

「こんなうきうきした帽子被るの初なんだけど」

「本当? 私は2回目。中学のとき、友達の誕生日で」

そのときはサプライズじゃないけどね、と言い切る前にチャイムが主役の到着を知らせた。

「やばっ」

私は慌てて帽子をダイニングテーブルに置き、瞬にリビングのドアのそばで待つように言ってリビングを飛び出した。


「へいらっしゃいっ」

玄関を開けて大声で迎える私に、奏は戸惑ったように小さく声を漏らした。

「なんかごめんね。瞬くん、寝坊したからちょっと遅れるって」

「寝坊……瞬が?」

瞬が奏になんと言ったのか知らなかったので、そこそこ自然なリアクションが取れた。

「ああ、寒いからとりあえず入って」

おじゃましますという一言と共に、奏はパーティ会場への道に足を踏み入れた。