世に漂う紅白の色も消えた2月も2週目が終わろうとしている今日、バレンタインデーの前日。私の部屋には、数分前から瞬がいる。温かいココアの入った2つのカップが乗ったテーブルを挟んで向かい合うように座っている。

ちらちらと毛玉が確認できるオレンジ色の上下セットのスウェットを着た私と、懐かしい茶色のベルベット調のジャージを着た瞬が同じ場所にいるこの光景は、傍から見たら生きる世界がまるで違う、出逢うはずのない2人のもとになにかが起きてしまったかのように見えるかもしれない。


「あ、そういえば明日ってバレンタインデーだよね」

「ああ、もうそんな時期か」

瞬にチョコでもあげようかな、と考えていると、瞬は「奏も18か」とどことなく親戚のおじさん感の漂う言葉を放った。

「奏、明日 誕生日なの?」

「ああ」

「本当? すごい嬉しい。今日と明日、私また孤独なの。ちょうどいいから、奏の誕生日盛り上げようよ。私、サプライズチックなことしてみたかったのっ。飾り買いに行こう?」

私は身を乗り出して言葉を並べると、飛び跳ねるように立ち上がった。

「……飾りって。どこに買いに行くの。しかもどこ飾るの」

「買いに行くのは近くのショッピングモール。飾るのは、下のリビング」

ほら決まり、さあ立って、と急かすと、瞬は困ったようにしながらゆっくりと立ち上がった。その瞬を部屋の外へ追い出し、私はタンスを開けた。