奏の寒がりエピソードを聞いていれば、あっという間に私たちの番がきた。3人同時に10円玉を投げると、お正月らしい音が響いた。3人同時に手を叩く。私は3人での幸せを願った。

お賽銭が終わると、奏はすぐに両手を暖かいポケットに入れた。

「どうする、帰る?」

「いやいやいや」

寒いのはわかるけどさ、と私は苦笑した。

「せめておみくじは引こうよ」

「ああ、いいよ」

肉まん食べたくなってきちゃって、と奏は笑った。「出た自由人」と瞬も笑う。

「僕から“強気”と“自由奔放”を取ったらなにも残らないからね」

奏の声に、その綺麗な顔が残るでしょうが、と心の中で返し、私はおみくじの箱に100円玉を入れた。隣の穴に手を突っ込み、下の方から1枚引く。続いて2人も引き終えると、3人同時に紙を広げた。男子は2人して苦笑い。

「なんだった?」

自分の結果を言う前に尋ねると、瞬からは「吉」と返ってきた。

「僕は末吉」

「愛は?」

「私コキチ」

私が言うと、2人は頭の上に3つほど疑問符を浮かべた。そして同時に私の紙を覗くと、同時に苦笑した。

「愛ちゃん、それショウキチ」

「えっ?」

「ダイ、チュウってきたらショウだろ」

「あっ、そう。迷わずコキチって読んだけどなあ……」

小吉という文字を眺め、ショウキチか、小さな幸せが訪れそうだなと考えていると、「行くぞコキチ」と瞬のばかにした声が聞こえた。