「……瞬くん、大丈夫?」
奏が未だ動きを止めている瞬に尋ねる。
「ああ……大丈夫」
ごめんな、と微笑むと、瞬は動きを再開した。
「ううん。ボールがあまりに想定外な方向に飛んでいったからちょっと驚いたけど」
苦笑する奏に、「あれは私も驚いた」と言ってしまった。男の子たちは数メートル離れた正面にいるのに、奏が放ったボールは思い切り左に曲がっていったのだ。私でももう少しまともな球を投げられるだろうとすら思ってしまった。
「よしっ、じゃあ あっち行こっか」
私は“あっち”という言葉に、もみじが広がる落ち着いた雰囲気の方という意味を込めた。今いる辺りには小学生くらいの子供や小さな子供もいるのに対し、あちらでは、若い人も見かけるけど基本的におじ様やおば様が散歩している。小さな噴水などもあり、かなり落ち着いた雰囲気の場所だ。



