「2人はね、中1の頃から騒がれてたんだよ」
コンビニの敷地を出ると、綾美から2人の話を始めた。
「すっごかったんだよ? 人気。芹沢くんはかっこいいし、大野くんはかわいい」
「ああ……。確かに芹沢くん、綺麗な顔してたね」
店を出る前に近くで見たら、驚くほど綺麗な顔をしていた。昨日の昼休み、綾美が言った“ビューティフル男子”にも納得できるほどだった。彼の顔は、トータルはもちろん、ひとつひとつもかなり整っている。
あまり想像もできないけど、笑ったらきっと素敵なのだろうなと思った。性格も悪くはなさそうだったし、もう少し柔らかい雰囲気を持てば嫌味かと思えるほどに完璧な人だと思う。
いろいろと考えていると、綾美が「でもね?」と話を続けた。
「あの2人、顔は完璧なんだけど、成績は大したことないの」
「そうなの?」
完璧そうな2人の欠点に驚き、隣を歩く綾美を見た。でも直後に、まあそうなのかなとも思った。この私が そんなに苦労せずに入れた学校にいるくらいなのだ。
「中学、あたし2人と一緒だったのね? で、1年と3年が同じクラスだったんだけど、2人とも基本 教室にはいなかったの」
「ふうん。授業中も?」
それはないだろうと思いながら尋ねてみると、綾美は頷かなくていいところで頷いた。
「教室で2人を見た人はあんまいないんじゃないかな」
「ああ……そう」
私は綾美から目を逸らすと、前を向いて空の下の方を見た。
私の通っていた中学校には、授業中に教室にいないだなんていう人は1人もいなかった。
時々メモ帳のような紙をシャーペンや鉛筆でひたすら真っ黒にしてる人は見かけたけど、その理由が気になるくらいでほとんどの生徒がちゃんと授業を受けていたし、教室や学校内は常に穏やかだった。



