焼き芋ホックホク祭りの翌週、私は瞬と奏と、近所の公園の銀杏並木の中を歩いていた。先週に引き続き、現実逃避だ。いよいよ真面目に将来のことを考えなくてはならない。


「ああ……みんなは卒業したらどうするの?」

私は、やっぱり大学に行くのかとため息のように言葉を繋げた。

「まあ、それが無難だよな」

「やっぱりねえ……」

「愛は?」

「私に進学だなんて選択肢は与えられてないから。嫌でも就職。奏は?」

「奏はほら、もう今のところで」

瞬の言葉で、再び奏のお仕事のことを思い出してしまった。

「……ねえ、奏ってその、どんな仕事してるの?」

「ああ、僕? 仕事なんてかっこいいものじゃないよ」

奏が笑って間もなく、私たちは銀杏並木を抜けた。直後、左側の芝生の方からサッカーボールが転がってきた。そのボールは、瞬のジーンズに当たって止まった。ごめんなさーい、と小学校高学年くらいの男の子2人が走って来る。

瞬がボールに左手を伸ばした。ボールは一度瞬の左手に乗ったものの、再び地面へ落ちた。

瞬が自分の左手を見つめている間に奏がボールを投げ返した。それはあまりに独特な軌道を描いたけど、男の子2人はありがとうございますと言ってボールを追って行った。ほんとごめんね、と奏が彼らの背中に叫ぶ。