軍手をして芋を割れば、ふわっと湯気が噴き出した。甘い匂いと幸福感が私を包んだ。いびつな断面は眩しいほどの黄色をしている。

「すっごい、本物」

「やっぱり初体験って楽しいよね」

落ち葉で焼き芋を作れたことに喜んでいると、奏が皮を剥きながら笑った。ほんと幸せ、と言って私は焼き芋をかじった。

「愛ちゃんそのままいくんだ」

「うん。皮剥くとか、最高にめんどくさい作業じゃない?」

私が言うと、奏は苦笑した。

「その“最高にめんどくさい作業”を全力でやってる人もいるけどね」

えっと聞き返すと、奏は瞬の方を見て笑った。奏の笑顔の先には、黙々と焼き芋の皮を剥く瞬がいた。

「……そんなに剥く? その辺、もう全然食べられるじゃん」

「なんか気になんじゃん」

「いやわっかんない。私くらいになると皮なんか剥かないから」

私がそう言って芋をかじると、瞬は小さく笑った。

「そのままいくとか絶対ありえない」

「皮剥いてる間に冷めちゃうじゃん」

「にしてもそのままは ねえわ」

「あっ、じゃあ みかんの白いモサモサも、かぼちゃみたいにトゥルットゥルになるまで剥く派?」

「もちろん」

「冷凍みかんとか完全に解凍されない?」

「むしろ微妙に温まってる」

「冷凍した意味ないじゃん」

「剥いたあとにもう1回冷凍するから。大丈夫大丈夫」

なにが大丈夫なの、と苦笑し、奏に話を振ると、焼き芋もアルベドもさっと剥くくらいだと返ってきた。

「アルベドってなに?」

「白いモサモサのこと」

「ふうん」

なんでも知ってるんだな、と思っていると、「チュウカヒともいう」と瞬が言った。

「えっ、中華?」

「中の果実の皮で、チュウカヒ」

2人ともなんでも知ってるね、と言うと、瞬が自慢気な笑みを浮かべた。