焼き芋ホックホク祭りは、まず落ち葉や枝を集めるところから始まった。奏とそれらを集めている間、溜まっていく葉や枝のそばにしゃがんでいた瞬が何度か私たちを見上げた。

どこに行っても落ち葉と会えるような庭だったからか、開始から30分ほどが経った庭の中央には、だいぶ大きな落ち葉の山ができていた。その隣には小さく枝たちも集まっている。


「もう、これくらいでいいかもね」

私は学校にあるようなオレンジ色のちりとりを放り、プラスチック製の熊手に抱きつくようにして枝と落ち葉の2つの山を見下ろした。

「そう? 元はこの葉っぱたちをどうにかするのが目的だったんだし、もうちょっとやろうよ」

少し飽きてきた私の言い訳のようなものに、奏が真面目な言葉を返して集めてきた葉を山に加えた。

「奏っていい人なんだね。私じゃ人ん家の庭掃除なんてなにがあっても手伝わない」

「いい人じゃないよ。ただ新鮮なだけ、庭掃除が」

「え、家政婦さんでも雇ってるの?」

言った直後、私は奏のお仕事のことを思い出した。結構人気なのかな、と考えていると、奏は「違うよ」と笑った。

「庭に葉っぱがこないの。周りに木がないから」

「あっ、そうなんだ」

「庭より、外の道の方が落ちてるかな。そこはたまに掃除する」

「家の敷地じゃないところ掃除してるの」

思わず大声を出してしまうと、「姉がうるさいんだよ」と奏は苦笑した。そのお姉さんはスイカ割り花火大会のときに猛反対した方らしく、3歳離れているらしい。

「まあそれも、僕らくらいしか掃除する人がいないからなんだろうけどね」

「ふうん……お姉さんもいい人なんだね」

「まあ、人様にはそう見られるのかな。なんせ、ソトヅラ ヨシコって名前だから」

私は聞き返すこともなく疑問符を浮かべた。奏が慌てたようにいやいやと言う。

「冗談だよ? 外面がいいからこっそりそう思ってるの」

実際にそんなこと言ったら僕刺されてるよ、と付け加えるように笑い、奏は落ち葉集めを再開した。その後ろ姿を眺めていると、下の方から視線を感じた。そちらを見ると、瞬が私を見上げていた。慣れないその角度が瞬を最高にかわいく見せる。

「なに?」

「いや、20分くらい前から思ってたんだけど」

「うん」

「もうちょい乾いた葉っぱねえの?」

「えっ?」

「葉っぱびっちゃびちゃ。燃えなくね?」

「ああ。まあ否定はしないけど……」

「これから奏のやつ、もっとこのびちゃびちゃ落ち葉を集めてくるんだろ?」

「うん……」

「火、点かなくね?」

「うん……」

「お芋 はふはふ どころのお話じゃなくね?」

「うん。どれもこれもそれも否定しない」

私は少しの沈黙のあとに苦笑し、奏を止めてくると残して奏が向かった方へ走った。