11月中旬。最近、少しずつ空気が冷たくなってきている。さらにずいぶんと慌てん坊だった木枯らしのせいで、人々の気分は思い切り冬だ。テレビの中もお店の中も、がっつりクリスマスに染まっていやがる。そんな中、私はまだ冬の気配すら感じていない。私は周りに流されたりしない。本来なら、冬はまだ10日以上も先の季節だ。冬は12月と同時に始まる。
久々に秋晴れとなった今日、私は自分の家の庭の中央にいた。今日は我が笠原家の庭で、焼き芋ホックホク祭りを行う。庭にやたらと枯れ葉が落ちているので、それで芋を焼き、食べるのだ。
「ういーっす」
庭に出てから30分ほどが経った頃、道の方から瞬の声が聞こえた。そちらを見てみれば、瞬の隣には奏もいた。彼は右手に乳白色のビニール袋を提げている。
「やっと来た。迷ってた?」
私が笑うと、「迷ってねえわ」と瞬も笑った。
「僕ん家からちょっと遠かったの」
「あっ、そうなんだ。寒くなかった?」
「ああ、大丈夫」
着込んできたから、と奏は軽く両腕を広げた。白い洋服に黒いダウンコートを羽織っている。
「中から、半袖Tシャツ、長袖Tシャツ、長袖トレーナーになってるの」
超厚着、と瞬が笑うと、奏は手袋を忘れたと真面目な顔で言った。
「いやいや、手袋なんて絶対要らないから。私なんかこのパーカーの下、インナーと長袖のTシャツだけだよ? 冬、先取りしすぎ。そんなんじゃ越せないよ?」
「えっ、10月頃から冬なんじゃないの?」
「なに言ってんの、冬は12月からでしょうがっ」
奏と言い合っていると、瞬は「まあどっちも間違っちゃいないんだけどな」と呟いた。