奏と2人でぽつぽつと話していると、片手にビニール袋を提げた瞬がやって来た。
「瞬、なにしてたの? ちょくちょく心配してたんだから」
ちょくちょくかよと苦笑を漏らす瞬にビニール袋のことを尋ねると、彼は知り合いのおっさんにすすめられて買ってしまったのだと言って中から冷やしパインを取り出した。
「すごい、パインのとこ袋に入ってる。りんご飴みたい」
「毎年買ってんだけど、2本以上買うと袋付きスタイルにしてくれんの」
「へえ。もしかしてこのパインも6年目?」
からかうように尋ねると、瞬はおう、と当然のように頷いた。そうしながらパインをくれた。次に、瞬はいたずらな笑みを浮かべて奏にパインを差し出した。奏は嫌そうにそれを受け取る。
「瞬くんも、断っていいんだからね?」
「なんか知んないけど、あの人を見ると買わずにいられなくなる自分がいんの」
「まあ、瞬くんがいいならいいんだけどさ」
奏は受け取ったパインを見て「僕のは本当に要らない」と心のこもった声を放った。
私は、なぜそんなに嫌なのだろうと思いながら袋を外し、匂いを嗅いでからパインを舐めた。匂いも味も、ただ美味しいパイナップルだ。パイン自体に問題があるわけではないらしい。
「普通に美味しいよ? 奏パイナップル嫌いなの?」
私が言うと、瞬は小さく笑った。こいつは、と話し始めた瞬の声を遮るように、すぐそばで誰かの携帯が鳴った。慌ててバッグの中を漁ったけど、自分の携帯を確認する前に奏が着信音を止めた。携帯を耳に当て、はい、と少し嫌そうな声を出す。
「……わかりました、戻ります」
電話の相手としばらく話したあと、テンションの低い声で言い、奏は携帯をポケットにしまった。相手を予想しながら奏の声や言葉を聞いていたけど、全く見当がつかなかった。
「ごめん、僕戻るね」
「怒ってた?」
瞬が訊くと、「いつも怒ってるけどね」と奏は笑った。
「じゃあ、僕はここで。もうすぐ花火始まるから、楽しんで」
「はいよ」
男子2人が手を振り合っているので溶け込もうと手を振ってみると、奏は満面の笑みで手を振り返してくれた。そしてすぐに先ほど歩いてきた方へ走り出したが、やがてバランスを崩して転びかけた。
私が「危ないっ」と大きめの声を出してしまうと、ぎりぎり立て直した奏は速歩きでどこかへ向かった。



