屋台が並ぶ方へ入る前にも通ったトイレの周りは、比較的人が少なかった。私たちはトイレの近くにある街路樹のそばでかき氷を食べ始めた。
「ねえ瞬、一口ちょうだい?」
「いや、ブルーハワイ入ってんじゃん」
言葉ではそう言いながらも、カップを持った手をこちらへ伸ばしてくれるのが瞬の優しいところ。そして私がブルーハワイをいただくと当たり前のように私のレインボーを掬っていくのは、ちょっぴり意外な瞬のかわいいところ。
「どう? レインボー」
「うん。普通に味覚が混乱してる」
「えっ、そう? 美味しいじゃん。お得感もあるし」
そう言いながらも瞬のブルーハワイをもらう手が止まらないのは、他人が食べているものは美味しそうに見えるという人間の本能。きっと、味覚が混乱するにもかかわらずレインボーを食べている瞬にもそれが働いているのだろう。
「ブルーハワイ最高」
「レインボーどこまでも微妙」
「ちょっ、じゃあ食べないでよ」
「だって、なんか知らねえけどすげえ勢いでブルーハワイが去っていくんだもん」
なにも言い返せなくなり素直に謝ると、瞬がなにかに気づいたように先ほど歩いてきた方を見つめた。



