仲のいい瞼を少しずつ離していくと、強すぎるほどの光が飛び込んできた。目を閉じ、その上に腕をのせる。

その状態で少しぼうっとしたあと、昨日の出来事を思い出した。隣を見れば、こちらを向いて眠る引くほど綺麗な瞬の寝顔があった。

そっと自分だけ布団から出、瞬の寝顔を眺める。しばらくして瞬の顔に伸びかけた手を止めた。

ほんの少し乱れた茶色い前髪から覗く長いまつげ、高い鼻に白い肌、おまけに形のいい唇。それらを眺めていると、触れたい衝動に駆られる。17年も生きてきて、これほど美しい人間に出逢ったことはない。本当にこれが人間なのかとすら思う。

髪の毛くらいなら触ってもいいかなと思ったけど、きっと起きてしまうだろうと思い、小さく息を吐いて静かにベッドから降りた。

ドレッサーの鏡を覗くと、見慣れた、眠気の残る残念な己の顔が映った。


「……起きるの?」

ふいに瞬の声が聞こえ、小さな悲鳴と同時に震えた体のせいでドレッサーに腰を強打した。

ドレッサーに背を向け、強打した腰を押さえてベッドの上で動く瞬を見る。

こいつ――さては寝たふりをしていやがったな。まさか、私が顔に触れようとしたのも知っていやがったりはしないだろうな。

いろいろなことを考えていると、少し眠そうな瞬と目が合った。

「……どうした、おっかない顔して」

瞬に指摘され、慌てて平然を装う。

「えっ、いや。別に? 昨日は、ごめんね」

「全然。なんか、こちらこそ」

「なんでよ。ちゃんと眠れた?」

「うん」

「そっか。それは……よかった」


強打した腰の痛みも忘れた頃、私はカーテンを開けた。眩しい光が部屋を包む。振り返った先の壁掛け時計は10時を少し過ぎた頃をさしていた。

「10時ですって。なにか食べて行く?」

「大丈夫。もう帰る」

「そっか。バイクで帰るんでしょ? 気をつけるんだよ?」

私が心の底から言うと、瞬は関係を見失うと笑った。

「ああそうだ。服、洗って返すから」

別にいいよと言うと、俺がいくないと返ってきた。

「わかった。じゃあ……もう帰るんだよね」

ちょっと待っててと残して私は部屋を出た。