海から家までは、自転車でも30分ほどの距離。バイクでは半分ほどの時間で着いた。

瞬の華奢ながらもしっかりしている体に腕をまわして風を受けている途中、私は大変なことを思い出した。


「ねえ瞬」

止まったバイクの後ろ、瞬に抱きついたまま言った。

「もう少しだけ、一緒にいてくれない?」

瞬の体にまわす腕に少し力を入れ、呟くように言った。

「いいけど、そろそろ暗くなるぞ?」

「だめ?」

「俺は全然構わないんだけど……」

「なにか温かいものでも飲もうよ」

「えっ?」

瞬の体が少し動き、彼がこちらを見たのだとわかった。顔を上げれば瞬と目が合った。

目を合わせたまま、ねっと笑いかけると、瞬は口角を上げた。