夢中で水をかけ合い、太陽が低くなり始めた頃に試合は終わった。今は私も瞬もただ水を触っており、穏やかな沈黙を心地よい波の音が包んでいる。
「そう言えばさ」
靴のつま先を少し濡らしていった水を眺めて言った。
「瞬は、運命と奇跡だったらどっちを信じる?」
なんとなく尋ねた私の声に、瞬は小さく笑った。
「えっ、私変なこと訊いた?」
「いや、どっかの変わり者も言いそうだなと思って」
「誰それ? あっ、元カノさんとか?」
冗談で言ってみると、瞬の苦笑が聞こえた。なんとなく、いけないことを言ってしまったような気がした。
「元カノなんか いるわけないじゃん。愛が初めてだよ。好きになったの」
理解に要した少しの沈黙のあと、えっと漏らした声と同時に瞬を見た。瞬は私から目を逸らして立ち上がり、手についた水滴を払った。
「よしっ。帰るぞ」
そう言うと、瞬はバイクを置いた方へ歩き出した。ちょっと待ってと言いながら立ち上がり、瞬の背中を追った。
「ねえっ、さっきなんて言った?」
瞬の隣についてすぐに訊いた。本当はわかっていたけど、嬉しすぎてもう一度聞きたかったのだ。
「そんな何回も言うようなことじゃないよ」
「こっちは何回でも聞きたいのに?」
「こっちは一回でも伝わってれば十分だ」
「ぶう」
後ろから微かに聞こえる波音の中、私は瞬の隣を歩きながら唇を突き出した。



