絡めた指を離すと、私たちは小さく笑った。
私が再び桜を見上げると、瞬は「行くか」と言ってバイクの方へ歩き出した。慌てて後を追う。
「もう帰るの?」
瞬の隣につき、顔を見上げた。
「まだいてもいいけど……」
瞬は私の上着を見て、笑顔を浮かべた。
「その格好だし、ちょっくらお出掛けしませんか?」
「お出掛け?」と聞き返すと、瞬はただでさえ大きい一歩をさらに大きくした。私はあっという間において行かれ、気がついたらヘルメットが飛んできていた。落ちる寸前でそれを受け取る。
「あっぶな……」
一気に体温が上がり、心臓はばくばくと騒いだ。ほっと息を吐きながら、かろうじて働いた自分の反射神経に感謝する。
「どう? こういう気分じゃない?」
「いやっ、全然。転ばない限り、このお誘いは断らないよ」
笑って言うと、瞬からも「転ばねえし」と笑った声が返ってきた。



