そこから入って来た紺色のスーツに身を包んだ30代後半から40代前半と見られる男は、私と目が合うと同時に「げっ」と思い切り顔をしかめた。

「なんっで貴様がここにいんだよ」

「どうしてもこうしても、先生たちが私をこのクラスに突っ込んだからでしょうよ。ああ最悪。なんで高校最後の担任が小嶋なのよ」

「お前なあ……」

先生は付けろよ、と続けると、小嶋は深呼吸をした。教卓の前に立ち、なにかを話し始める。その声に、一昨年のような緊張感は含まれていなかった。

私は唸りながら机に伏せた。「おい」と小嶋の声が聞こえた気がしたけど、そのまま顔は上げなかった。

私が悪いのではない、私を、親友であり勉強ナビである藤井 咲菜と違うクラスにしやがった先生共が悪いのだと自分に言い聞かせた。