瞬に抱きつき、30分ほど風を浴びていただろうか。バイクは、両端にまだ緑色になっていない芝生が広がる、車がすれ違うこともできないような細い道に止まった。
「なにここ? かわいらしい絵本に出てきそうな感じだけど」
バイクから降りてヘルメットを脱ぎ、辺りを見渡した。芝生にはちらちらとたんぽぽが咲いていた。
「極まった田舎みたいだろ」
「うん。でここはどこ?」
きょろきょろと辺りを見回す私に、まあまあと瞬は笑った。
「ここからは歩いてこうぜ」
「この先になにかあるってこと?」
瞬は「そう遠くないからさ」と笑い、バイクを押して歩き始めた。合わせて歩き出す。
「こんなところ初めてきた」
綺麗な芝生を眺めながら呟いた。
「よく知ってるね、こんな場所」
「2年に上がる前にたまたま見つけて、愛みたいな人ときたいと思ってたの」
「へえ、楽しみ。そのときもバイクで?」
「そう」
1人で、と瞬は自嘲するように笑った。



