デート当日、部屋の窓から見た外は快晴だった。
予定より30分ほど遅れて10時半過ぎに目を覚ました私は、しばらく悩んだ末に濃いピンク色の長袖Tシャツの上に比較的 厚手な黒いパーカーを羽織った。下は安定のジーンズ。
リビングへ行くと、お母さんに「早いね」と言われながらテレビをつけた。今日の気温を確認するためだ。画面左上には『11:04』と表示された。
「ねえお母さん。今日って寒いの?」
キッチンでなにかを切っているお母さんに訊いた。
「いやあ? そうでもないと思うけど。なんで?」
いや別に、と返そうとしたとき、顔を上げたお母さんが噴き出した。
「えっ、なに」
「暑くないの?」
「ちょうどいいと言えば嘘になる。でも言われたの、今日一緒に出掛ける人に。暖かい格好しとけって」
「出掛けるの今日?」
「えっ、昨日言ったじゃん」
「聞いてないけど」
「あっ、言ってないや」
今日 出掛けるね、と言ってテレビを消した。
「ねえお母さん」
「んー?」
「もしかしてなんだけどさ、バナナ切っちゃってたりしてる?」
「してるー」
「じゃあさあ、かわいい娘にちょっと分けてくれない? バナナ。作ってくれてもいいんだけどさ」
「なにを?」と訊かれ、「チョコバナナトースト」と最高の笑顔で返した。お母さんからはセルフサービスです、と満面の笑顔と共に返ってきた。



