授業中に宝物を落とすという悲劇のあとは平和に終わった。あれから一度もペンケースから出さなかったからだ。
家に帰って宝物を眺めているうちに、日付は変わってしまった。
頭から煙が出るんじゃないかというくらいの内容を頭に叩き込んでようやく訪れた昼休み、私はぼうっと冬の景色が広がる窓を眺めていた。後ろの瞬は、充電中だと言って4時間目の途中から寝ている。ボタン電池と電気のハイブリッドになったらしい。
「愛」
不意に前から声が聞こえ、間抜けな声と共に顔を上げた。
「おお、綾美か」
おつかれ、と笑うと、綾美はその途中で「ちょっと」と言った。私がぽかんと口を開けると、綾美は猫のような目をドアの方へ向けた。
「ちょっと話がしたいんだけど」
「うん。どうした?」
「あたし、大発見しちゃったの」
綾美はこそっと言うと、にやりと笑った。