想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


寄ったのは、学校からほんの数分の場所にあるコンビニだ。

休日の昼時ということもあってか、店内は少し混んでいた。お客さんの年齢層は低めで、私や綾美くらいの人から小学生くらいの子供が多い。

「じゃあ、また」

「うん」

綾美と別れてもう一度店内を見渡すと、改めて繁盛しているなと思った。

どのコーナーへ行っても人がいるような店内。比較的すいているレジ前のおにぎりコーナーで、特に周りを気にすることなく棚へ手を伸ばした。

すると、絶対におにぎりではない なにかに触れた。驚いて自分の腕の先を見ると、ほとんどの指が飾られている派手な手があった。慌てて自分の手を引く。

「す、すみません」

「あ、いえ……」

相手から小さく男性の声が聞こえ、私はやっと相手の顔を見た。その顔がどこかで見たことのあるような気がして、相手の顔を見つめてしまった。


「……芹沢くん?」

数秒後、斜め後ろ辺りから声が聞こえた。振り向けば綾美がいた。

もう一度相手の顔を見た。確かにあの小顔男子だった。私服だからわからなかったのだ。今日の芹沢くんは、ベルベット風な素材の洒落た茶色い上下セットのジャージ姿だった。

やっとわかったと1人ですっきりしていると、芹沢くんが迷惑そうに自分たちを見ていることに気がついた。


「あ、すみません。でした……」

芹沢くんに聞こえたかどうかもわからないほどの声で言うと、私は大股で飲み物のコーナーへ向かった。