楽しい自由時間も夕食も終わり、私たちはホテルの部屋に戻った。ホテルはホテルらしいけど、部屋の中は旅館のようだ。布団を敷いたら電気はすぐに消すようにと先生に言われた。

部屋割は先生が勝手に決めてしまい、咲菜とは同じ部屋になれたけど綾美とは離れてしまった。私たち3人が仲よくいるのを知っていてこんなことをするなんて、やつらは鬼だと思った。悪魔だ。


「いやあ、楽しかったね」

布団を敷きながら、隣で布団を払う咲菜に言った。咲菜はその手を止め、「たしかに楽しそうだったよね」と笑った。

「愛、大くんに思いっ切り雪かけてたもんね」

「そう。瞬と考えたの」

瞬と、と咲菜の驚いた声が聞き返してきた。あっ、と声が漏れる。他のルームメイトの視線も感じる。

「えっ、芹沢くんと」

全力でとぼけると、咲菜はほとんど話したこともないような女子たちに確認した。ぐいぐいと詰め寄る咲菜に、ルームメイトは首を縦でも横でもない絶妙な向きに振った。

「なに愛、いつの間に呼び捨てなんかにしちゃってんのよ」

「あー、おしまい おしまい。明日どんなお土産買ってく?」

咲菜は布団の上であぐらをかき、ため息をついた。

「まあそこに行ってみて、かな。特になければ買わないし」

「あっ。じゃあ咲菜、鹿の置き物とか見つけちゃったら?」

私の急な振りに、咲菜は困ったように苦笑した。

「まあ、買いたくなっちゃうのは仕方ないよね?」

ルームメイトの戸惑いを含んだ小さな笑いが起こる。

「鹿シリーズはもうバスで言ったじゃん。はいっ、寝ますよー」

咲菜が私の域に侵入して天井から垂れる紐を数回引くと、部屋は真っ暗になった。食後のアイスクリームを欲する体を敷布団に寝かせ、家で使っているものより重たい掛け布団を掛けた。