緩やかな波線を描くようにしてスピードを調節しつつ、先ほどの奏に負けないくらいの勢いで山を下っていく。

少し離れた左隣を滑る瞬は最高にかっこいい。

瞬に見惚れながらもスピードの調節を忘れずに滑っていると、奏までの距離がかなり短くなった。体重を思い切り右足にかける。体が下ってきた方を向いた頃には、瞬と同時にザッという音を鳴らして勢いよく止まった。まだ立ち上がっていない奏に結構な量の雪がかかる。直後、ざわつきをバックに、奏を心配する声が上がった。


「ちょっ、いった……」

全身に雪を浴びた奏は首を激しく左右に振り、ゴーグルと一緒に帽子を脱いだ。それに付いた雪を払う。

「大野くん大丈夫ー?」

決して心配しているようには聞こえない女子の声が言った。奏は特に返事はしない。

「大成功だね」

「こんな大事になるとは思わなかったけどな」

付け加えようとした言葉が瞬から返ってきて、素直に頷いた。「いや大失敗しかしてないけど」と奏が独り言のように言った。