その後、ダジャレモードが入った咲菜は近くの席の人を巻き込んでダジャレを連発した。後半は瞬や奏も巻き込まれた。奏は見事なまでにスベり、瞬はそこそこハイレベルな返しをした。この人はなにをさせても完璧なのだと再確認した。さすがボタン電池で動く男だ。
スキー板をつけてスキーについての説明を聞き、自由に近い状態になった私たちは早速 純白の山を登った。
「はあっ、この辺?」
しばらく登ったところで言った。
「いいんじゃね」と瞬の声が聞こえて振り返る。下の方にカラフルな服を着たたくさんのクラスメイトが見える。
「すごいね。誰が誰だかわかんない」
「こっから飛ばしたら最高だな」
「ねっ」
瞬と話していると、「あっ」という小さな声と同時に嫌な音がした。反射的に隣を見るとそこから奏の姿が消えていて、視線を戻すと猛スピードで下っていく人間が1人増えていた。
「奏フライング事故」
「えっ、超速くない? スキーやったことないとか言ってたけど……」
全然上手いじゃん、と言いかけたところで、クラスメイトの集まりをぎりぎりで回避した奏が派手に転んだ。瞬がなんとも言えない笑みを浮かべる。楽しそうなような、呆れているような。
「大丈夫。あいつは絶対 裏切らねえから」
「ほんっとに運動だめなんだね」
まあこうなってくれなきゃ困ったけど、と心の中で付け加えた。
「じゃあ、行くか」
「うん」
最後にもう一度作戦を確認し、瞬と同時に飛び出した。



