「なんかごめんね、せっかくの休日に」
芹沢くんが持ってくれている傘の中、自転車を押しながら言った。
「全然。1つの傘に2人で入るっていう、貴重な体験もしてるし」
芹沢くんは1年の頃によく見たかわいらしい笑顔を浮かべた。
「なんか……緊張するな」
「なに言ってんの。いつも一緒にいるじゃん」
「まあ、そうだけどさ」
しばらく歩いたところで歩行者用信号に止められた。
「でも本当、ありがとね。すごい楽しかった」
「俺も楽しかった」
「あんな想定外の出費ばかりでも?」
「うん」
笠原となら――激しい雨音に紛れてそんな嬉しい言葉が聞こえた気がした頃、信号が変わった。