暖かい部屋に、肌触りのいい布団。まさに眠るための環境の中、やつは騒ぎ出した。

私はほとんど目を閉じたまま、目覚まし時計のスイッチを探り騒音を止めた。辺りがあまりに眩しく、枕の上にあるタオルケットに顔をうずめて二度寝の世界へ入ろうとした。ぎりぎりのところで、それを前日のお母さんとの会話に阻止された。

“明日から高校生なんだね”

中でもお母さんのその言葉が一番強い力を持っていた。目と鼻の先にあった極上の二度寝の世界が跡形もなく吹き飛ぶ。


「やっばい」

私は慌てて枕元の携帯で時間を確認し、転がるようにベッドから降りて向かい側の黄色いカーテンの前へ向かった。朝、カーテンを開けて日光を浴び、伸びをしながら目と頭を覚ますのが日課なのだ。

カーテンを開けると、明るい部屋がさらに明るくなった。完全に開いた目を再び細める。庭の木から飛び立つ小さな鳥を見送り、伸びをした。頭も完全に目を覚ました頃、階段の下から「早くしなさい」とお母さんの声が聞こえた。

「はい ただいまっ」

ドアに向かってお母さんに聞こえるようにと願いながら叫び、左側の壁に目を向けた。

しわもほこりも付いていない、真新しい制服が掛かっている。