一番安い傘を1本、私たちの財布の中身ほぼ全てで購入し、外へ戻ってきた。
自動ドアをくぐる前、これで止んでいたら笑おうと決めていた。だけどその必要はなかった。雨は、止むどころか先ほどよりも少しばかり強くなっているような気がした。
「よかったな、無駄になんなくて。さっきの全部」
結構な勢いで地面を叩く雨粒を見て、芹沢くんは呟いた。
「ちょっと強すぎる気もするけどね」と私は笑った。
隣でバサッという音と共に紺色の傘が開かれる。高校生が持つとなるとかなり落ち着いた紺色だ。
この傘の近くにもっと明るい色のものもたくさんあったのだが、それらはこれより数百円高かったので諦めた。
「行こ」
傘と共に駐輪スペースへ向かう芹沢くんの隣についた。隣と言っても、さっきよりずっと近い。財布の中はほとんど空だけど、心は喜びのような感情でいっぱいだった。



