想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


芹沢くんとメープルの味を堪能し、何気なく見た時計は解散を促す時間をさしていた。

2人で出た外は全体的に灰色に染まっていた。今にも降り出しそうだ。


「降るのかな?」

どうだろう、と芹沢くんが言った直後、雨粒らしき水が頬に触れた。わっ、と声が出る。

「きた?」

「うん、なんか今……」

最初の一滴が落ちれば、それを追うように次々と雨粒は落ちてきた。

「きた……ような」

「やべえな」

芹沢くんは困ったように笑い、すぐに去る雰囲気ではない雨空を見上げた。

ふとバッグに折りたたみ傘が入っていたような気がして、私はバッグの中を覗いた。オレンジ色のなにかが見えた。それを引っ張り出す。

「あ、入ってない……」

“オレンジ色のなにか”は折りたたみ傘のカバーだった。肝心の中身はどこに逃げてしまったのだろうかと思いかけ、どうせ家にあるやつだなと自嘲気味に笑った。

「もう買っちゃう? 傘」

芹沢くんが言った。

「えっ、でも私、お小遣いそんなに残ってない……」

私が首を振ると、芹沢くんはポケットから財布を出した。中を見て苦笑している。

「大変申し訳ないんだけどさ、400円くらいって残ってる?」

「400円……」

慌てて財布を取り出し、中身を確認した。

「うんっ。500円ちょっとある」

申し訳ない、と言うと、芹沢くんは自動ドアの方へ引き返した。折りたたみ傘のカバーをバッグにしまいながらその隣につき、2人で店内へ戻った。