想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


「行ってきまーす」

久々に友達と遊ぶ約束が入っている土曜日。私はリビングに聞こえるであろう声量で言うと、その近くの玄関で靴へ履き替えた。真っ白な、春休みの間に買ったスニーカーだ。

店で目が合った瞬間に呼ばれ、値段を見ると迷わずに買った。


「よしっ」

隣に置いた白いバッグを持ち、玄関を飛び出した。穏やかな春の匂いが頬を撫でる。

まだ少し涼しさの残る庭の自転車置き場から自転車を出すと、すぐにまたがり学校へ向かって重たいペダルを踏み込んだ。


少し進んだところで右に曲がり、急な上り坂を登る。座って上るには少々きつい角度なので、すぐに立ち漕ぎに切り替えた。そのすぐ隣を、数台の車が自分とは逆の方向へ走っていく。

道端に咲く草花も、すっかり春のものになっている。水色の小さな花や、濃いピンク色をした少し背の高い花などが目に入った。

風に揺れるそれらに見送られながら、私はペダルを漕ぐ足をどんどん速めた。