心配した通り、奏の割ったスイカは食べにくかった。種が多い欠片を取ってしまったからなおさらだ。
「べったべた」
下手に割られたスイカの大量の果汁と闘っていると、「味は悪くないだろ?」と芹沢くんが言った。彼の手からも果汁が滴っている。
「うん」と頷きながら、確かに味は最高だけどさ、と思う。
「奏が持ってきたやつだから」
「えっ、なんか関係あるの?」
尋ねてみると芹沢くんは奏を見た。つられて奏へ視線を向けると、「ないよ」と奏から返ってきた。
「てか奏、なんでそんなに綺麗に食べられるの」
「えっ、いい感じに割れたじゃん。むしろなんでそんななの」
あんたの割り方が下手くそなんだよ、と言いたいのを堪え、「スイカがあまりにみずみずしくて」と言ってやって一口かじった。
本当に、品質は最高だ。



