棒が勢いよくスイカに当たると、無傷だったスイカは必要以上に細かく割れた。

「ぐっしゃぐしゃ」

隣で芹沢くんが呟く。

「ええっ、これ食べづらくない?」


私たちの声はないもののように、奏は満足気に目隠しを外した。

「わっ、すごい割れてるっ。こんなに割れてると思わなかった」

奏は最高の笑顔をこちらに向けた。

「すごくない? 僕すごくない?」

正解が見つからず芹沢くんに助けを求めると、芹沢くんは はいはいと頷いていた。

「これ喜ぶやつ?」

「まあ、いいんじゃん。本人が楽しけりゃ」

すごい割れてる、と1人で楽しそうな奏に、芹沢くんは小さな拍手を送った。