夏休み息抜き計画、第2弾。

まだまだ猛暑日の続く8月下旬。強い日差しの下、私たちはスイカ割り花火大会を行うため、芹沢くんの家に集まっていた。


綺麗である程度広さがあり、家族の許可も下りた庭が、この芹沢家にしかなかったのだ。

我が笠原家は“綺麗”という時点でアウト、大野家は家族の許可が下りなかった。スイカ割り花火大会の話を出したとき、大野家にはお姉さんの怒声が響いたらしい。お姉さんほどではなかったけど、ご両親にも反対されたと奏は言っていた。


「左左っ。あー、もうちょい右。てか、とりあえず真っ直ぐ歩こうか」

たった5周しか回っていないのに、奏の平衡感覚はぼろぼろだ。なんとか指示をする私の右側で、芹沢くんが笑っている。

「笠原さん、大変。視覚超大事」

目隠しをした奏が、杖をついたおじいちゃんのような姿で言う。

「知ってる」

感情のない声を返し、私は後ろで手を組んだ。

「あの、1回休憩しない?」

「私はスイカ食べながら休憩したいな」

奏は悔しそうに小さく笑い、無傷なスイカの方を向いた。

「はい、回ってー」

もう一度 奏を5周回し、ぽんと華奢な背中を叩いた。

「はーい前前ー。左ー」

あっ、そこ、と私が叫ぶように言うと、奏は女性のような手に握った棒を振り下ろした。