「待って、ほんと……ほんと重い」
必死に体を動かしているようだけど、でかい砂の山は少しも動かない。
「砂浴スペシャルバージョンなんだけど、どう?」
整った顔を覗き込むと、奏は女性並みに綺麗な手で目元を隠した。埋める前に腕を額の上にのせていたから、片手だけは自由なのだ。
「重いだけ。ていうか、すでにあちこち痛い……」
「おお、いいじゃん。毒素出てんじゃね?」
「ばか、掘らないからだよ」
素早い突っ込みに、つっこまれた本人は奏の右側で笑う。
そして奏の上に乗る砂の山に指でなにかを書くと、軽く手をこすって立ち上がった。私の名前を呼ぶ。
「ん?」
「なんか買ってくるか」
「おっ。じゃあ、かき氷がいいな」
よし、と言って歩き出した芹沢くんについていく。
待って待ってと慌てる奏に、すぐだからと手を振った。



