想い舞う頃〜最初で最後の恋〜


だけど結局、私の集中力がそんなに続くはずもなかった。授業は5時間目の後半から、帰りのホームルームは最初から、窓の外を眺めて乗り越えた。


靴に履き替えて出てきた外は、綺麗な夕焼けに染まっていた。今日は金曜日。明日と明後日は休み。自転車置き場へ向かいながら、2日間の休日をどう過ごすか考えた。だいたい予想はできたけど、答えは出なかった。


「愛ーっ」

自転車置き場へ着くと、綾美の低く恐ろしい声に呼ばれた。さらに彼女は、倒れ込むような勢いでくっついてきた。声も動きもゾンビのようだ。

「なに。怖いよ」

咲菜を相手にするように言い放つと、私は自転車のかごに鞄を入れた。

「ねえねえ、明日って暇あ?」

ゾンビのような雰囲気を放っていたかと思えば、今度は髪の毛をくるくるといじり、甘えたような声で訊いてきた。この質問には即答できる。

「うん、暇だね」

予定のある休日なんて、私にはない。

「やった。じゃあじゃあ、遊ばない?」

「……遊ぶ? どこで」

私が質問で返すと、綾美は小さく唸った。

「よしっ。じゃあうち」

「綾美の家?」

「うん。決定ね。明日のお昼頃、校門前に集合。自転車で」

綾美は一気に話すと、ひょいと自転車にまたがり、自転車置き場を出て行った。


「明日の、お昼頃……」

綺麗な髪をなびかせて校門へ向かう綾美を見送りながら、確認するように呟く。

忘れないようにしなくてはと思いながら、私も自転車にまたがり、学校を出た。