「奏ー。ボールー」
私たちがハイタッチを終えても、奏は起き上がらない。
「力尽きたな」と芹沢くんが笑う。
「どうする?」
私の問いのあと、芹沢くんは少し間を空けて言った。
「埋めちゃう?」
「砂浴ってやつ?」
「そう」と頷くと、「砂は15センチくらいな」と付け加えた。いたずらっぽい笑みが眩しい。
奏のそばに行き、立って、と声を掛けて彼の無事を確認した。消えそうな声だったけど、無理と答えられるようではきっと大丈夫だ。
私たちはお互いの目を見て頷き、できるだけ多くの砂を奏にかけた。
うわっ、と声を出した奏だけど、体を動かす気力はまるで残っていないらしい。芹沢くんが足元から、私が首の下辺りから掛けていく。
「ちょっと待って、重いんだけど」
まだそんなに掛けていないのに、奏は騒ぎ出した。声は出せるようになったらしい。
「脚、脚超重い……」
瞬くんか、という奏の呟きで芹沢くんが掛けている方を見てみると、すでに奏の脚は砂の中へ消えていた。
芹沢くんは子供のような笑顔を見せると、私の前に来て奏のお腹辺りに大量の砂を掛けた。奏の白い肌がどんどん見えなくなっていく。
「待って。待って、なんの罰ゲーム?」
「いや、休みたいだろうと思って」
さらりと放った言葉と同時に奏の上半身をも埋め終えると、芹沢くんは「よし」と満足気に奏を埋める砂の山を眺めた。



