夏休みの宿題が怖くなくなってしまえば、残りの時間は今まで通りに進んだ。

夏休み初日、私は予定がないという芹沢くんと学校の近くで待ち合わせをしていた。七夕の日、家の方向が逆ということで別れた場所だ。

私は待ち合わせ場所に校門前を提案したのだが、こちらの方が無駄に走らなくていいとのことでここになった。


約束の15分前のそこには、さすがに芹沢くんもいなかった。予定の10分は前に行動しているイメージで、これでいたらどうしようかと思っていたので少し安心した。


今日はこれから、近くにあるという図書館で宿題をやる。あの芹沢くんにも、教えるとなると自信がない教科があるらしく、そのときのためにと奏くんも一緒に宿題をやることになった。


教えるのが苦手だとか言ってもどうせテストの点はいいんでしょ、と妬んでいると、猛暑日だというのに芹沢くんは爽やかにやって来た。

「おつかれ。早いな」

「そう? たった今だよ」

そうか、と私の言葉に一言で返すと、私の前に自転車を停止させた。

「奏は? 会わなかった?」

「奏くん……会ってないけど。こっち方面なの?」

「うん」

大丈夫かな、と芹沢くんは呟いた。

誘ってしまって悪かったかな、と思ったけど、特に言葉には出さなかった。

どうしようかと考えていると、芹沢くんはなにかに気づいたように声を漏らした。

「今日、髪 縛ってるんだね」

「えっ……ああ、うん。暑いからさ」

私はポニーテールの束を揺らした。

「リボンの色も、笠原っぽい」

芹沢くんの言葉で、今日 自分がオレンジ色のリボンを縛っていたのを思い出した。

「あっ、本当? 嬉しい」

芹沢くんは私の髪の毛を眺めた。

「こっちの方がいいよ」

「えっ?」

「かわいい」

芹沢くんがくれた嬉しすぎる言葉につい にやけてしまう。芹沢くんもなぜか恥ずかしそうに笑っている。

なんで芹沢くんが恥ずかしがるの、と思いながら、気温と1度は上がったであろう体温でどうしようもない暑さを感じた。