そんなに歩くことなく見つかったエスカレーターで1階へ下り、大きな笹を探して歩いていると、和風な落ち着いた雰囲気の店に呼ばれた。
このショッピングモールには咲菜や家族とも何度かきているけど、この店を真面目に見るのは初めてだった。
紺っぽい色の壁には洒落た箸が並んでおり、中に入ってすぐの楕円っぽい形の机には扇子が並んでいる。
それらは1200円と、お小遣いを全額出せば買える値段だ。
「扇子?」
斜め後ろ辺りから芹沢くんの声が聞こえた。
「うん。かっこよくない? 扇子って」
「へえ。なんか意外」
「あ、そう?」
「うん。なんか、外でもでっかい うちわ使ってそうなイメージだから」
否定はできないそのイメージに、思わず噴き出した。
「当たってる?」
「まあ、否定はできないね」
確かに、休日 家族で出掛けるときは、トートバッグに部屋で使うようなうちわを突っ込んでいる。
「だから、そろそろ扇子デビューしようかと」
「ほおん。まずは うちわのサイズ小さくしようとは思わないんだ?」
「小さい うちわなんてほとんど風こないじゃん」
「うーん、よし。一生でかい うちわ使っとこ」
「うるさいな。さっきみたいな芹沢くんはどこ行ったのよ」
あの、高級感溢れるアクセサリーを私っぽいと言ってくれた優しい芹沢くんは。



