気がつけばカレンダーは7月になり、ちょうど1週間が経っていた。今日が七夕であることは、家を出る前まで観ていたテレビで思い出した。
最近は少し寂しく感じている金曜日の今日、私は目を覚ました瞬間からかき氷が食べたかった。
学校の時間は、今日が七夕であることなんて関係なく進んだ。織姫様と彦星様が再会できる大切な日だというのに、まったく冷たいものだ。
昼食を済ませて教室内が賑やかになった今、私は自分の椅子に反対向きに座り、勝手に芹沢くんの机に伏せている。
机の半分近くを邪魔されている芹沢くんは、まるでそれに気づいていないかのように頬杖をついて窓の外を眺めている。
奏くんは、ここから少し離れた自席で伏せている。彼の席は、私の席から4列右にある綾美の席の1つ前だ。
その席で伏せる奏くんを、寝てるのかな、なんて思いながら少しの間眺めた。
「ねえ芹沢くん」
席の半分近くを勝手に使ったまま、腕の上に顎をのせて名前を呼ぶと、芹沢くんの視線が窓の外から帰ってきた。
「今日って学校終わってから時間ある?」
私の急な質問に、芹沢くんは特に考えることなく頷いた。私と同じ部類の人間だと思っていいのだろうか。
「じゃあさ、帰り……ちょっと付き合ってくれない?」
だいぶあった緊張や恥ずかしさを隠した声で言うと、芹沢くんは頭の上に疑問符を浮かべた。なにをするんだと訊きたそうな表情だ。
「いや……こんな小さなことで誘うのは申し訳ないんだけどさ、私今日、かき氷を食べなきゃいけないのね?」
芹沢くんは3回ほど頷くと、「いけないんだ」と笑った。
いけないの、と頷いて私は続けた。
「で、1人じゃ寂しいなあ……って」
「で、俺?」
自分を指さして言う芹沢くんに、「ごめん」と頷く。
「ああいや、俺はいいんだけどさ。……俺でいいの?」
「うん。芹沢くんと……もうちょっといたいなって」
自分の口から放たれた言葉があまりに正直なものすぎて、恥ずかしくなった。
それを隠すつもりで笑うと、芹沢くんも つられるように笑って、「今日の放課後な」と確認した。