やがてコールが止み、『はい』と芹沢くんの声が聞こえてきた。

「ああ、私。今暇?」

『うん。え、どうした?』

珍しくない?と言ってくる芹沢くんの声に、そうだね、と苦笑する。

「いやあ、宿題とか教えてもらっちゃったりしちゃう? とかなんとか思っちゃって?」

実際、宿題に出されたのは得意な分野ではなかった。

相手には見えもしないのに、首を傾げながら頭を掻いた。

『そっか』と芹沢くんの声が聞こえると、電話越しに なにかのページをめくるような音が聞こえてきた。


なんでだろう、と思った。

ただの電話越しに聴こえる友達の声なのに、その人の近くで鳴っている音が電話越しに聞こえているだけなのに、こんな不思議な気持ちになるのは。