2年3組の表をさらに辿っていくと、『栗原 綾美』、『芹沢 瞬』、さらには『藤井 咲菜』の文字まで見つけた。
最高のクラスじゃん、と思いながら小さくガッツポーズをして振り返ると、たった今登校して来た、といった雰囲気の咲菜を見つけた。少しして咲菜も私に気づいたらしく、いつものように大きく両手を振ってくれた。
私も大きく右手を振り返す。咲菜は長い髪を弾ませて駆け寄ってきた。私もたくさんの生徒の中に飛び込み、咲菜の方へ向かった。
「クラス表見た?」
「見た見た。同じクラスだったよっ」
おはようのあとはその言葉を交した。咲菜は奏くんのことも訊きたそうな顔をしている。
「……同じだったよ。奏くん」
仕方なく教えてあげると、咲菜は自慢気な笑みを浮かべた。
「だから言ったでしょ? 同じクラスになるって。これからぐっと距離も縮まるから」
ねっ、と咲菜は親指を立てた。
「それはないよ。知ってるでしょ? 私が人生で一度も恋をしたことがないってこと」
だいぶ悲しいところで威張り、私は昇降口へ向かった。「知ってるよ」という声と共に咲菜が追ってきた。
そして私の隣に来ると、もう一度「知ってるよ」と言ってきた。
「だから、大くんが愛の初恋相手なんだって」
説得するように語る咲菜を適当に流しながら、2人で教室へ向かった。