その後も“大沢コンビ”に関する話は続き、やはり綾美の言っていたことは嘘だったのかもしれないと思った。しかし、前と同じ1つの疑問が浮かんだ。

もしも綾美が言っていたことが嘘だったなら、綾美はなぜ2人に関する嘘を言ったのか、という疑問だ。

咲菜は、冗談のつもりだったのではないかと言っていた。私もその場はそれで納得してしまったけど、それは違うような気がしてきた。

綾美は、2人――特に芹沢くんが本当の不良であると思っていた。今もそう思っているかもしれない。

それで、私が芹沢くんと関わることを避けさせようとしていた。

もしも咲菜の言う通り 冗談だったなら、あそこまではしないのではないかと思ってしまう。

咲菜と別れ、帰り道の途中からその考えが浮かび、離れずにいた。だけど、考えれば考えるほど答えから遠ざかっていくのを感じている。

そして今、結局深い意味はなかった、という答えと共にゴールテープを切ろうとしている。

「……あっ」

1階から、さっさとそのままゴールしてしまえとでも言うように美味しそうな匂いがしてきた。今日のこの匂いはなんだろう。

正体まではわからないけど、美味しいのは確かだ。美味しい料理が待っているとなれば、考え事をしている暇などない。早くその料理に会いに行かなくては。

私は部屋を飛び出し、階段を駆け下りた。