翌日、私は12時前には咲菜の部屋にいた。

咲菜からのお誘いメールで起こされ、まだ早くないかと返したけど、うだうだ言うんじゃないと叱られたのだ。

「ええっと? 昨日、なに話したっけ」

「“大沢コンビ”のこと」

私が言うと、咲菜は全てを思い出したように手を叩いた。

「2人は真面目じゃないって聞いたんだよね」

咲菜の問いに頷くと、彼女は数回頷いたあと、首を振った。そして、「それ、嘘だよ」と断言した。

「だってさ、昨日も言ったかもしれないけど、2人……特に芹くんは寝てる時に指名されても普通に正解答えるんだよ?」

「授業中に指されても満点の答えを返すっていうのは聞いたけど、芹沢くんが寝てるっていうのは初めて聞いた」

「ああそう? いや最近さ、自分が前日になに言ったかとか全然覚えてないのよ」

「……おばあちゃん?」

そうかもしれない、と咲菜は笑った。

「ああそれでね? 2人ともあまりにも勉強できるからさ、2人と同じ中学だったらしい子に訊いたのよ。大くんたちって前からあんなに勉強できるのかって」

「そうしたら?」と先を促すと、咲菜は軽く両手を広げ、肩をすくめた。

「中学の頃に高卒レベルの頭脳だってさ」

「ああ……ハハハッ」

もうその次元まで行ってしまうと、驚きを通り越して笑うことしかできない。テーブルを挟んで向かい合っている咲菜も笑っている。

「はあ。でもいたよね、小学校くらいのときにもさ」

「え?」

「同じ年齢のくせに、こっちが習ってないようなことも知ってやがるやつ」

知ってやがる、の部分に少し笑い、「確かにいたね」と共感した。

「国語だとさ、黒板にもひらがなで書いてあるのをわざわざ漢字で書きやがるやつとか」

「いたいた。黒板がひらがな なんだから ひらがなで書きゃいいんだよ、って思ってた」

「実際には言わなかったの?」

「どうだろ、わかんない。言ったかもしれない」

愛じゃ絶対言ったよ、と咲菜は笑い、ペットボトルのストレートティーを飲んだ。それを真似るように、私もペットボトルの中身を2〜3口飲んだ。