「まあ、芹くんはあんま喋んないからわかんないけどさ、席も近くないし。だけど、大くんは優等生のど真ん中を突っ走ってるよ」
「ふうん。奏くん、すごいんだね」
素直に思ったことを言ってペットボトルの中身を口に含むと、咲菜はまたにやりと口角を上げた。
「どう? 大くんに興味出てきた?」
だいたい予想できたその言葉に、含んだストレートティーを飲み込み、ため息をついた。
「だから、奏くんにも芹沢くんにも、そういう想いはないから」
「ははあん、そうですか。あっ、誤解しないでよ? ウチは大くんたちのことなんとも思ってないからね?」
「だから私もだから」
本当にやめてくれないかと言ってから、気がついた。
「咲菜、2人のこと“大くん”、“芹くん”って呼んでるの?」
「そうだよ? 大くんをそう呼んでるうちに、芹くんもそうなったの。そりゃ最初は大くんも大野くんだったよ? それが、おーんくんになって、今の大くんになったの。連続で呼ぶからさ。『大野くん大野くんおーんくん大くんっ』みたいな」
愛もそう呼べば?といたずらな笑みを浮かべる咲菜を、思い切り睨んでやる。
困ったように笑う咲菜から目を逸らすように視線を移した先に時計があり、針は解散を促す時間をさしていた。
「もうこんな時間だ」
きた時間が遅かったからな、と思いながらペットボトルの蓋を閉めた。
「帰るの? 怒った?」
「帰るけど、本気では怒ってない」
次言ったらどうなるかわからないけどね、と付け加えて立ち上がった。
「じゃあさ、明日も来てくれない? どうせ暇だし。愛も暇でしょ?」
「私をいつでも暇だと思ったら……いや、大正解なんだけどさ」
大間違いだと言いたかったけど、本当に暇なのだから仕方ない。
10ポイントくらいかな、と言う咲菜に20ポイントをあげ、玄関で別れた。



