次の日も、私はお誘いを頂き、咲菜の部屋にいた。お邪魔してから約2時間。会話の中心には“大沢コンビ”がいた。
「私、聞いたんだよね」
もらったペットボトルのストレートティーを片手に言うと、咲菜は大量の干しぶどうに手を伸ばし、「なにを?」上目遣いに私を見た。
「友達からね。2人――“大沢コンビ”は、全然……真面目じゃなかった、って」
今まで話していた内容からは言いにくいその言葉を言い切ると、咲菜は干しぶどうへ伸ばした手を止め、もともと小さくはない目をさらに大きくした。
数秒間その状態で固まると、咲菜は震えるように首を振った。
「なに言ってんのその友達。あったま おっかしいんじゃないの?」
「私もおかしいと思ってるんだけど、嘘ではないはずなんだよ。その子、2人と中学校同じだったらしいから」
「いやいや。同じ中学だったんなら、2人のなにを見てたの?」
私に言わないでよと顔をしかめると、咲菜はごめんと呟いた。
「だってさ、ウチ今、大くんと席が近いんだけど」
「あっ、そうなんだ」
初めて聞いた情報に驚くと、咲菜は一度だけ頷いて続けた。
「大くん めちゃめちゃ頭いいからね」
「へええ」
「ウチ毎時間 勉強教わってるもん」
「ほおーん」
私の中では咲菜もかなり勉強はできるのに、奏くんはそれ以上か。すごいなと思いながら干しぶどうに手を伸ばすと、咲菜はにやりと口角を上げた。
「愛、中学の頃こんな感覚だったんだね」
「勉強を教わるってこと?」
「そう」
「こんな感覚もそんな感覚も、教わらなきゃまるでできないんだって」と言うと、咲菜は「ああそっか」と笑った。
ここまで簡単に納得されちゃうと、だいぶ傷つく。



