先に部屋に行っててほしいと言われ、見慣れた咲菜の部屋で待っていると、小ぶりなサラダボウルいっぱいに入った干しぶどうと共に咲菜が来た。

左手に干しぶどうの入ったサラダボウルを、右手に2本のペットボトルの緑茶を持っている。

「よーし。これで朝まで語れるね」

「うん。それまでには帰るけどね」

苦笑する私をよそに、咲菜は満足気にサラダボウルとペットボトルをテーブルに置いた。


咲菜の部屋は私の部屋と似た雰囲気で、基調とした色やデザインもなく、生活に必要最低限のものしかない。

咲菜の部屋にあって私の部屋にないものと言えばテレビくらいだ。


「じゃ。乾杯」

「ああ、乾杯」

ペットボトルをぶつけて鈍い音を鳴らし、咲菜は楽しそうに中身の3分の1ほどを飲んだ。

「はあっ――なんかさ、大人みたいじゃない? こういうの」

咲菜は笑顔で言った。

「カンパーイつって一気に半分くらい飲んでさ、干しぶどう つまむの」

「そこは、本物はビールで乾杯して干物をつまむんだろうけどね」

「いや、本物はそこ枝豆だって」

「あ わかった、小魚だ」

盛り上がった話がくだらないものだと気づき、2人で笑った。

しばらく話していなくても距離はできないものなんだな、と干しぶどうをつまむ咲菜を見ながら思っていると、目が合い「美味しいよ?」と勧められた。