3学期も、11月最終日のハプニングを最後に無事に過ごすことができ、春休みを迎えた。
奏くんと廊下でぶつかった、11月最終日。家に帰ると、咲菜から電話が掛かってきた。
私もちょうど話したいことがあったので出たら、彼女は「誕生日おめでとう」と言うために電話をくれたようだった。
それに一言「ありがとう」と言ってから、その日一番のハプニングを聞いてもらった。
昼休みに廊下で奏くんとぶつかったことだ。
「奏くんだよ? ほんっとに怖かった」
『すっごーい。ラブのストーリーじゃん』
こっちは相手に怪我をさせていないか真面目に怖かったのに、咲菜はハイテンションでラブストーリーへ持っていった。
『映画でありがちなやつじゃんよそれ。恋だ恋』
「映画じゃあ よくある話だけどねえ……」
私と奏くんが恋だと。いや、どこまでもありえない話だ。なにをどこでどう間違えたら私と奏くんが恋に落ちるのだ。
『愛はもうちょっと夢を持った方がいいって。結構聞くじゃん、実話を元に――って話でもさ』
「だからそれはほんの……」
『そのひと握りに、愛と大くんも入ってるかもしれないじゃんって。大くんとぶつかったのは、恋の始まりっていう運命からの誕生日プレゼントなんだよ』
咲菜は私の言葉を遮り、楽しそうに語った。
「そうなのかねえ……」
私は小さく苦笑を漏らした。
奏くんとのハプニングをなんとか恋へ持っていこうとする咲菜に、ただ笑うことしかできなかったのだ。