「えっ、待って。立てる?」

僕が固まってしまったせいか、彼女の顔に不安の色が現れた。

「ああいや、全然。大丈夫です」

慌てて立ち上がり制服をはらうと、少し低い位置になった彼女の顔を安心が満たした。

「よかったあ。怪我ない?」

「僕は……全然。あなたは?」

「私は……ねえ」

転んでもないし、と申し訳なさそうに、恥ずかしそうに彼女は肩をすくめた。相手が無事なようで安心した。

「よかった。……では、失礼します」

彼女に一礼し、大股で教室へ向かった。眠気なんてすっかり消えていた。それよりも、ありがちなシチュエーションとわかりやすい一目惚れに驚いた。