11月も終わりに近づくと、肌寒い日が続き、店やテレビの中はすっかり冬になっていた。我が大野家のリビングに毎朝流れている情報番組でも、今日は特に冷え込むと気象予報士が言っていた。

寒いのが嫌いな自分には最悪な日だと思った。今までも十分に寒かったというのに、それ以上に冷え込むとはどういうつもりだ。


つい最近 入学したのに寒くなるのは早いなと思いながらキッチンで1切れのりんごをかじっていると、漫画やアニメの主人公のような寝癖をつけた姉が起きてきた。

「おはよう」

弟の挨拶に唸るような声を返しすぐにソファへ飛び込む彼女とは、3歳離れている。

「じゃあ、りんご切っといたから。出る前にでも食べて」

数切れ食べたところで夢と現実の世界をさまよう姉に言い、保存容器の蓋を閉めた。

洗面所へ向かう前、一応「行ってきます」と言ったが応答はない。すでに鞄は玄関に置いてあるので、朝にする姉との会話はこれで終わりだ。

しかし、朝はこれくらいでないと困る。学校から帰ればいろいろと仕事を押し付けられるからだ。

あの調子で外に出たら印象はガタ落ちだろうなと歯を磨きながら思った。

姉は、ご近所さんからの評判がやけにいい。外に出ると元気いっぱいな賢い女の子になるからだ。

もちろん家族がご近所さんに人気であるのは嬉しいことだが、外での感じのよさを1割だけでも家の中にまわして欲しいというのが僕の本音だ。