『……はい』
今日は珍しく、少し長めなコールのあとに芹沢くんの声が聞こえた。
「あっ、私。今、大丈夫?」
変なときに電話しちゃったかなと思い確認すると、『全然』と返ってきた。
「そっか。よかった」
『ていうか、久々じゃん?』
「えっ?」
『電話。掛けてくんの』
「ああ、そう?……もしかして寂しかった?」
『その心配はない』
食い気味に返ってきた芹沢くんの言葉に私の方が寂しくなった。
「ねえもう、ほんっとひどい」
こっちは毎日この時間を楽しみにしてるのにと言うと、宿題のためだけだろと満点の答えが返ってきた。
大正解と言ったらなんて言うんだろうと思ったけど、それを言う前に話は進んだ。
『で、今日はなんの授業聞きたいの』
「ちょっと、授業ってやめてよ」
私は電話の向こうにいる芹沢くんに苦笑し、ベッドから降りて宿題をテーブルに並べた。
「あー、今日もそんなに嫌いなのないかも。まあ、好きなのもないけど」
『じゃあ切る?』
「嫌だよ。……やっぱり今忙しい?」
『いや、それはないけど。先生はお勉強を教えるためにいるんでね』
「先生」
苦笑しながら芹沢くんの言葉を繰り返し、あんなかっこいい先生だったら教室に入ってきた途端大騒ぎだろうな、なんて思いさらに笑いそうになってしまった。



