昼食の時間は、「食べる?」「いいの?」「気が変わっちゃった」をさらに2〜3回繰り返した。

家に帰ると、宿題を教えてもらうのはもちろん、今日1日の悲劇を聞いてもらえたらと思い芹沢くんに電話を掛けた。

昼休みは、あれから空腹を通り越した眠気が襲ってきたので会っていない。


『はい』

今日も、芹沢くんの声は数回コールを聞けば聞こえてきた。

「芹沢くーん……」

『えっ、なに。どうしたの』

「今日ねえ? 不幸の連続だったの」

泣きそうな声を作っていると、1日の出来事を思い出し本当に泣きそうになってきた。

『……不幸?』

私は、朝の遅刻の件と昼のお小遣いの件を話した。芹沢くんは小さく噴き出し、楽しそうに笑った。

「ひどーい。芹沢くんも笑った」

『いや、悪い悪い。なんか、漫画みたいで』

笑いをこらえながら言うような芹沢くんの声が、私の涙をさらに誘った。

「本当、悪魔でしょ。“食べる?”って言っておきながらさ、一口もくれないんだよ?」

『まあその流れで本当にくれるやつは相当優しいやつだよな』

「芹沢くんは? あげる?」

『まさか。俺はその友達タイプだから』

「うわあ……でもなんか想像つくかも」

いたずらな笑みを浮かべて、食べたがっている人で遊ぶ、すごく楽しそうな芹沢くんの姿。

そんな場面がしっかり映像になって流れてしまったので、頭を数回 振って話題を宿題のことに変えた。